介護リフォーム徹底解説！介護リフォームの費用相場や助成金について知ろう

 

「将来は自分の子どもに介護をしてもらうことがあるかもしれない」

「一緒に暮らしている両親にも近い将来介護が必要になるだろうな」

たとえば、段差があると車椅子での移動は困難ですし、狭い浴室では入浴の介助をすることは難しいでしょう。

そんなとき、今の住宅のままでは、介護に悪影響が出ることも考えられます。

介護のためにリフォームを検討するという方も少なくないかもしれません。

それでは、介護リフォームはどのように行えばいいのでしょう。 介護リフォームは どのくらいの費用がかかってくるのでしょう。また、実際に 介護リフォームを行う際、 助成金などの補助は出るのでしょうか。

今回は、こういった多くの疑問にお答えし、介護リフォームについて詳しく解説いたします。

介護リフォームは、やったほうがいいとはわかっているけれど、いま現在問題はないからまだ大丈夫だろう…とつい先延ばしにしがちです。

 

介護リフォームの必要性とは何か

高齢者の事故の中で、8割近くは家の中で起こると言われています。

とくに段差が多い場合、高齢者が生活していくうえでも、介護をするうえでも弊害となってくるものです。

そのため、“介護のためのリフォーム”が必要です。

家の中の段差で起きる事故は多い

介護リフォームがされていない通常の家には、段差が多くあります。玄関先や階段などの大きな段差は、体の自由が利きにくい高齢者にとって大きな障害になることはもちろん、部屋と部屋の間にあるような小さな段差でさえも、高齢者にとっては危険なものになってしまいます。

介護する側（介助者）にとって快適な空間を作ろう

介護リフォームと聞くと、介護される側の立場を優先に考えてしまいがちです。確かに、介護される側が快適に過ごせる環境は大切ですが、介護は介助者がいるからこそできることなのです。

介助者がスムーズに動けるようなスペースがあること、粗相をしてしまったときに簡単に掃除ができる床材、介護者が勝手に玄関を開けることが出来ない施錠方法など、介助者の負担を少しでも減らせるような介護リフォームが重要です。

介護を続けていくのは大きなストレスになってしまうため、介助者の気持ちが少しでも軽くなる方法を考えると、どんな場所をリフォームしていけばいいのかわかりやすいかもしれません。

何が起こるかわからない将来のために

今はまだ問題ない、もう少し生活が大変になってきたら考えよう、などと思っているうちに、本格的な介護が必要になる時期がきてしまう可能性もあります。

そうなれば、介護リフォームどころではなくなってしまうかもしれません。「リフォームをするために家を空けることは難しい…」そういった状況になり、結局リフォームができないままで介護をしていくことになるかもしれません。

介護リフォームは、介護が本当に必要になる時期が来る前にしっかりと考えて、手遅れにならないようにしましょう。

介護用にリフォームするのはどの場所か

介護の大きな弊害になってしまうのは、おもに段差です。

リフォームするべき優先場所は、移動の際に障害となる段差があるところや、立ち座りがしにくいところです。どのような場所をリフォームすればいいのか、場所別にみていきます。

玄関の介護リフォーム

玄関は段差が多く、介護する側にとってもされる側にとっても障害になります。

段差は高くても15㎝以内が理想の高さになります。また歩行の際、体を支えることができる手すりや持ち手などが必要になってくるでしょう。

玄関の介護リフォーム⑴スロープを設置する

スロープを設置することで、玄関の段差を解消できます。玄関前のスペースが狭いと設置が難しい場合もありますが、スロープがあれば車いすでの出入りもしやすくなります。また、歩行の際もゆっくり坂を上り下りするだけなので、体への負担を軽減することが出来ます。

玄関の介護リフォーム⑵手すりを設置する

手すりがあると、歩行の際に体を支えることが出来ますし、転倒の防止にも役立ちます。また玄関で靴を脱いだり履いたりするときに、手すりがあると非常に便利です。

玄関の介護リフォーム⑶ 間口を広くとる

玄関の間口が狭いと車いすが通れず、介助者が介護者の体を持ち上げて部屋の中まで運ぶ必要性が出てきます。間口を広くとり、車いすでも入れるようにすれば介助者の負担を軽減することが出来ます。

玄関の介護リフォーム⑷扉は引き戸を選ぶ

玄関ドアは、手前に開くタイプの住宅が多いです。しかし、歩行が大変な状態や車いすになると、扉の前で鍵を開けてから一度後ろに下がり、扉を開けるためのスペースを確保しなければなりません。移動が大変な状態では、ほんの少しの移動でさえもつらいものです。引き戸にすれば扉を開けるスペースを確保する必要がなく、最小限の動きだけで玄関の出入りが出来ます。

しかし、引き戸は引く分の扉が収納されるスペースが必要になります。住宅の構造上、引き戸にするのが難しい場合もあるので、専門業者に相談してみるとよいでしょう。

トイレの介護リフォーム

トイレは1人分のスペースしかないことが多いので、介護をするために必要なスペースを確保しなければなりません。

トイレの介護リフォーム⑴手すりを設置

 

トイレは立ったり座ったりの動作があるため、体を支えるための手すりが必要になってきます。体重を手すりにかけても大丈夫なように、壁も補強しなければなりません。

トイレの介護リフォーム⑵和式から洋式へ変更

家の築年数が経過している場合、多くの住宅が和式トイレを使用しています。和式トイレは用を足すときにしゃがむ必要があるので、足腰の力が弱っていると体への負担が心配になります。あまり体に負担をかけないように洋式トイレに交換するとよいでしょう。

トイレの介護リフォーム⑶トイレ内を冷やさない

夜中にトイレへ行った際、ヒートショックを起こしてしまうケースが増えています。トイレが寒くなりすぎないよう、トイレ内に薄型のヒーターを設置したり、4方向の壁面に断熱材を入れたり、温水洗浄の取り入れ、暖房便座へ交換するなどの対策を考えましょう。

お風呂の介護リフォーム

お風呂での事故も多いので注意が必要です。狭いお風呂だと介助しづらいことも多いため、リフォームが必要になってきます。

お風呂の介護リフォーム⒈床は滑りにくい素材を選ぶ

浴室内の床は、濡れると滑りやすくなります。足腰が弱っていると転倒しやすいため、出来るだけ滑りにくい素材を使用しましょう。

お風呂の介護リフォーム⒉またぎやすい高さの浴槽にする

足腰が弱っていると片足をあげてまたぐ際、バランスを崩しやすくなります。また浴槽の中も滑りやすいので、出来るだけ足を上げずにまたぐことが出来る高さにして転倒の危険性を下げましょう。

お風呂の介護リフォーム⒊手すりをつける

浴室内は立ったり座ったりする動作が多いため、浴室の出入り口や洗い場、浴槽の周辺などに手すりがあると安心でしょう。

お風呂の介護リフォーム⒋浴室内を拡張する

お風呂に入る際、介助することを想定して、2人で入る余裕があり体や頭を洗える広さがあるかどうかを確認してみてください。もしも十分な広さがない場合は、浴室内の拡張を検討しましょう。

お風呂の介護リフォーム⒌暖房を設置する

トイレと同じように、浴室内でもヒートショックが起きやすいです。出来るだけ温度差をなくすために、浴室暖房乾燥機を設置しましょう。体に負担がかかるような急激な温度変化をなくすことが大切になります。

お風呂の介護リフォーム⒍断熱材を入れる

断熱材を壁面4方向に入れて温度差を少なくして、ヒートショックを防ぎましょう。

システムバスなら、システムバスをまるごと断熱材で包み込む断熱材オプションもあります。

また、温度差を少なくする方法として窓を二重窓にすることも有効な手段です。

介護リフォームの費用相場を知ろう

介護リフォームをする場合、どれくらいの費用がかかるのだろうと不安に思う方も少なくありません。

それぞれのリフォーム場所の費用相場についてみていきましょう。

トイレの介護リフォームの費用相場

トイレリフォームを行う際、かかる費用とリフォーム内容の違いについて説明します。

10万円未満で可能なトイレ介護リフォーム：手すりの設置

手すりの設置、便座の交換など、小規模であれば、3万円～10万円ほどでリフォームが可能です。

便座交換は操作板が便座の横にある場合は10万円前後ですが、リモコンタイプで便座とは別の位置に独立して設置されるタイプのものだとプラス2万円～4.5万円ほどかかります。

また、便座を設置するためにコンセントを増設する場合は、さらに3万円ほど追加で必要になります。

30万円未満で可能なトイレ介護リフォーム：トイレ本体の交換

トイレ本体を交換し、壁や床などもリフォームする場合は、30万円ほどかかります。手洗い器を設置する場合も、グレードがあまり高くないものを選べば30万円未満で設置が出来ます。

30万円以上で可能なトイレ介護リフォーム：和式から洋式へ

和式から洋式へ変える場合は40万円ほどかかります。

タンクありにするか、タンクレスにするかによっても費用は変わってきます。

タンクありに交換する場合は5万円ほどアップします。ただしタンクレスに交換する場合、手洗い器を別で設置する必要が出てくるので、別途20万円ほどが必要になります。

また、こだわった内装にしたり、フタが自動開閉したり自動洗浄できたりなどの設備があるものは、50万円以上かかることがあります。

トイレは1日の中で何回も使用する場所になります。設備のグレードをあげることで楽になることも多く、流すボタンを押す必要がない、ふたを開け閉めする必要がない、手洗いが別にあって手が洗いやすい、便座が温かいなど…介助者のサポートがなくても自分でできることが増えれば助かります。

また、大人用おむつを使うようになった場合は、トイレにおむつを置いておくスペースがあれば便利です。費用の兼ね合いもあるでしょうが、できるだけ使い勝手のよいトイレにするとよいでしょう。

お風呂の介護リフォームの費用相場

お風呂リフォームの費用相場と、内容について説明します。

50万円未満で可能なお風呂介護リフォーム：ドアの交換や手すりの設置、壁の張替えなど

手すりの設置やドアの交換、壁や天井・床の張替などの工事は50万円未満で可能です。

ただしお風呂は多くが大幅なリフォームが必要になるので、50万円未満で済むケースはあまり多くありません。

150万円未満で可能なお風呂介護リフォーム：システムバス全体を交換するなど

システムバス全体を交換する場合は100万円前後で、在来浴室をシステムバスへリフォームする場合は150万円ほどで出来ます。

ただしシステムバスのグレードや浴室の広さによっても変わります。100万円前後で最新のシステムバスへ交換できる場合もあります。

150万円以上で可能なお風呂介護リフォーム：浴室の拡張や増築など

浴室を拡張したり、増築したりする場合は大掛かりな工事が必要になります。150万円以上、250万円ほどかかるでしょう。介護用にと考えるより、家族みんなが楽しくお風呂に入れるようにしようと思えば、グレードをあげてリフォームをするのもいいでしょう。

ただしお風呂のリフォームは工事内容や選んだ商品によって大きく前後するため、実際に現地をみてもらい、見積もりを出してもらいましょう。

玄関の介護リフォームの費用相場

30万円未満で可能な玄関介護リフォーム：ドアの交換、段差の解消など

玄関ドアの交換は30万円ほどで可能です。段差を解消するのは10万円ほどでできるため、どちらかであれば30万円以内でのリフォームが可能です。

50万円未満で可能な玄関介護リフォーム：大掛かりなリフォーム

玄関ドアのグレードを上げたい場合は、50万円ほどかかります。

収納や建具などの大掛かりなリフォームでなければ、玄関リフォームは50万円以内で十分可能です。

バリアフリーのリフォームには介護保険を活用する

介護のためのバリアフリーのリフォームは、介護保険が適用されるため助成金を受け取ることが可能です。

住宅改修による介護保険の上限額や受給対象が定められています。

リフォームにかかる費用の負担が軽減されるので、ぜひ介護保険を活用しましょう。

介護保険を利用する流れを見てみよう

介護リフォームを介護保険を利用して行うためには、事前に申請が必要になります。申請を出すのは、リフォームが終わってからだと介護保険適用にならないので、注意しましょう。

⒈ケアプランを作成する

まず、福祉専門のスタッフであるケアマネージャーに相談をします。

どのようなリフォームが必要かを判断し、ケアプランを作成するのがケアマネージャーです。介護保険の申請は、ケアマネージャーが作成する「理由書」がないとできないので注意してください。

担当のケアマネージャーがいない場合は、市区町村の高齢者支援課への相談でも問題はありません。ケアマネージャーや高齢者支援課では、バリアフリーリフォームが得意な業者を紹介してもらえる場合もあるでしょう。

また、リフォーム会社によっては申請も一緒に行ってくれる会社もあります。

⒉事前に住宅改修費を申請する

リフォーム工事が開始される前に、市区町村の担当窓口に申請を行いましょう。

申請するためには、下記の書類が必要です。

＊介護保険給付費支給申請書 ＊住宅改修を必要とする理由書 ＊住宅改修を必要とする理由書 ＊見積書 ＊見積額内訳書 ＊工事施工前の状態がわかる写真 ＊完成予定のイメージがわかるもの ＊住宅改修に関する承諾書（賃貸物件の場合のみ）

市区町村によって必要な書類が異なる場合があるため、必要な書類に関してはあらかじめ問い合わせをして確認しておきましょう。

⒊介護リフォーム工事を依頼する

ケアマネージャーによるケアプランが完成したら、次は設計や工事をしてくれる業者を探しましょう。介護リフォームを数多く取り扱っている業者だと心強いでしょう。

また、自治体によりますが「受領委任払い制度」と呼ばれる制度を導入しており、市区町村が認めた受領委任払い登録事業者が工事を行う場合は、介護保険を利用した際の自己負担額のみを支払うだけでよい、というシステムを利用できます。リフォーム費用は高額になることが多いため、全額支払いをするのは大変だという場合には登録業者を選択しましょう。

⒋家屋調査の立ち合いをする

工事の前は、業者が家屋調査を行います。立ち会いをして業者と一緒に検討していくと自分たちの希望に沿ったリフォームが行われやすくなるでしょう。

⒌介護リフォームのプランを検討する

家屋調査後に業者が提示するプランをしっかり確認、検討しましょう。

実際の生活動線などを踏まえながら確認を進めると、リフォームの失敗が少なくなります。

⒍費用の確認と契約・工事を開始

リフォーム内容を確認後は、費用のチェックも忘れずに行いましょう。

見積もり額がOKであれば、実際に契約を結び工事が開始されます。

⒎助成金の申請・還付

工事完了後、その旨を市区町村へ報告しましょう。リフォーム前後の状態がわかる写真、領収書や工事費の内訳書、所有者の承諾書など、市区町村に指定されている書類を提出してください。

受理されると、助成金が還付されます。

事前に「受領委任払い制度」を利用していた場合は還付されませんが、必要書類の提出は行います。

助成金は支給限度額が20万円までで、そのうち9割～7割は市区町村から支給されます。

介護リフォームは、ポイントをしっかり押さえてお得にしよう

介護リフォームは、申請に必要なものが数多くあるので面倒だと思われがちですが、ポイントをおさえておけばスムーズに出来てお得です。

支給限度額が20万円であるとはいえ、介護保険で9割～7割は賄うことが可能になります。

記事を参考にして、ポイントをしっかりおさえて介護リフォームを行ってくださいね。

 

それぞれの住宅に合う介護リフォームを考えよう

もし今現在、介護リフォームの必要性を感じなくても、将来必要になることがあるかもしれません。

また、介護リフォームをすることで介助者の負担を大きく減らすことが出来ます。今のうちから将来のことを考えてリフォームをしておくこともいいかもしれません。

介護者・介助者の両者が快適に暮らせるように、それぞれの住宅に合ったリフォームを考えていくことが大切です。